中村颯希 貴腐人ローザは陰から愛を見守りたい1巻


 今年も折り返し点を過ぎまして、ただでさえ東京オリンピックで夏コミは無く、新型コロナウィルスの影響でワンダーフェスティバルや東京ゲームショウ、更には来年の夏コミさえも開催されない状況で悶え苦しむ人達の心の叫びが全国のみならず全世界に轟いているだろう今日この頃(笑)、皆様に置かれましてはいかがお過ごしでしょうか。
 さて今回紹介する本は、そういう人達の一種・腐女子を主人公にした、「シャバの普通は楽じゃない」の作者・中村颯希先生の新作「貴腐人ローザは陰から愛を見守りたい」です。

 本作の主人公ローザは美貌と慈愛深さで知られる伯爵令嬢。しかしその正体は、薔薇愛、つまり男同士の恋愛に妄想をたぎらせ、己の萌えを追及しまくる貴腐人──まさしく私達の世界であれば腐女子と呼ばれる人種です。
 ところが彼女が将来の夢である、修道女となって「聖書」を記し、大陸中に薔薇愛を広めるための下準備として、賄賂のつもりで修道院に寄付をすれば敬虔な信徒と思われ、領地の識字率向上に努めれば領民から感謝され、薔薇な妄想に興奮のあまり倒れれば病弱で繊細な令嬢扱いされると言う具合に、欲望と下心のままにやることなすこと全てが高潔な行いと勘違いされ、「薔薇の天使」と呼ばれる有様です。
 そんな14歳のある日、異母弟のベルナルドの出現で、彼を『千年に一人の理想の「受け」逸材である』と断定したことから、「ベルたん総受け計画」をするや、そこから事態は一層エスカレートして、王子や王女、さらには異国の王子まで関わって、遂には国を揺るがす陰謀にまで巻き込まれるという、こうして書いてみると「どうしてそうなる?」と思うくらいのストーリー展開です。
 本人は自分を取り巻く環境がどうなろうとマイペースに薔薇愛を追求している一方、周囲のローザに対する勘違いが、ストーリーが進むごとに積み重なっていき、事実とはかけ離れに離れた、悲劇に耐えて高潔に生きる「薔薇の天使」像が出来上がっていく様は、常識を外れに外れた主人公のスペックと思考が笑いになっていた前作「シャバの普通は楽じゃない」とは違う方向で喜劇と化しています。
 勘違い系の作品は漫画・小説を問わず沢山ありますが、その中でも事実にはかすりもしないのに辻褄はぴったり合うように、緻密に張り巡らされた勘違い要素や伏線の数々は精度が極めて高く、この作品は間違いなく、勘違い系小説の粋と呼べるでしょう。
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