冲方丁 スプライトシュピーゲルIV テンペスト


 世間ではいよいよゴールデンウィークに入ろうという今日この頃、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
 私は先程冲方丁先生の小説「スプライトシュピーゲル」の最新巻「スプライトシュピーゲルIV  テンペスト」を読み終わりまして、早速こちらで紹介と感想を書きます。

 今回はサブタイトルにもある「テンペスト」の前に、ドラゴンマガジンで連載された「フロム・ディスタンス 彼/彼女までの距離」も掲載されてます。
 こちらの話は前巻の事件の後、休暇でかつて鳳たちが守ることができなかった子供たちの最後の場所へ行くという名目ながら実質デートみたいな感じでウィーンの街を歩き回る鳳&冬真、それを邪魔してやろうと後を追う雛&水無月、更にそれを阻止しようと探し回る乙&日向に加えてニナ及び戦術班酔いどれ野郎共の、シリアスを織り交ぜつつも基本的に青春ドタバタストーリーです。ところで作中、鳳と冬真、乙と日向は以前から絡みがあるからいいとして、雛と水無月の組み合わせはこれまで直接的な絡みがほとんど無かったから正直そう来たかと読んでいて思いました。まあ水無月の意中の相手には既に冬真がいるし、雛も特に意中の相手はいないようですから、このまま本格的にくっついちゃえばと思うのは私だけでしょうか? 今後の展開に期待。
 さて、その後の「テンペスト」では、とある戦犯法廷に立つ被告と7人の証人を保護する任務に就く鳳たちですが、先に到着した6人の証人と鳳たち、ニナとでプレイヤーがそれぞれ架空の国の国家元首になって世界の統一を目指すゲームをすることになります。ところがたかがゲームと思いきや、政策が成功しないことがあるのは序の口で、鳳が担当した超大国が他国のために実施した開発援助が結果的にその国を破綻させることになったり、エネルギー問題から南極と北極の両方で戦争が勃発したり、遂には世界的な水不足が発生して、それまであらゆる政策がうまくいかず貧困や混乱、国際的非難にあえいでいた雛の国がかつて実施していた水資源の開発のおかげで世界のキーパーソンになり、それが混乱に拍車を掛けつつも最後は世界の統一へ繋がっていくプロセスは、政治の複雑さと、願うだけでなく実行力も伴わなくては願いは叶わないのだと教えてくれます。地位や権力のある人間は大体裏で自己の保身や利益で真っ黒に汚れているのがこの手の物語のお約束ですが、今回登場した証人たちは高潔な理想を持ちつつ実行し、かつ実行し続ける力と意志を兼ね備えた人たちであることが、何とも新鮮でまぶしく感じました。
 それだけに、ゲームの終了を合図のように襲撃が始まり、鳳たちの奮戦も虚しく一人また一人と証人が殺されていく様子に、鳳たちの怒りと悲しみがビンビンに伝わってきますし、それで打ちのめされても再び立ち上がっていく姿には、私も大いに勇気づけられました。
 あと、今回はまた「オイレンシュピーゲル」とストーリーがリンクしてまして、作中で何度も鳳が涼月と電話で連絡を取り合い、始めは涼月のぞんざいな受け答えに腹を立てるも次第に相手を理解するようになります。後日発売される「オイレンシュピーゲル」の最新刊でどんな事態が展開されるかも気になりますが、涼月が電話で鳳のことをどう思うのかも興味深いですね。

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